▽11月27日取材
よしかわでは、秋から冬への移り変わりはあっという間です。ブナやクヌギなど雑木の森独特の赤・黄・オレンジ・ベージュ色等々カラフルな紅葉に目を楽しませたのもつかの間、高い山の上の方では、もう木々は葉を落として裸の枝を寒い風にさらしています。
そんな冬の初めに、よしかわでは田圃に水を入れます。正式には冬季潅水、最近は冬水田圃とも呼ばれるようですが、この時期田圃に水を入れることによって、田圃の中に生えた雑草や残った稲の根、舞い落ちてきた落ち葉などの、微生物による分解が早く進むようになるのです。これから田圃の上には2〜3メートルの雪が降り積もりますが、雪の下では、微生物が来年の稲のための土作りをしてくれるわけです。冬季潅水は自然と共生する昔からの農民の知恵。よしかわではそれが、絶えることなく今も生きているのです。
冬季潅水をした田圃では、春に水を入れるととオタマジャクシやメダカ、ゲンゴロウやタニシ、川エビ、ヤゴなどが自然に生まれてきます。冬の間、土の中で寒さを耐えてきた生き物たちです。厳しいよしかわの冬の雪の下の土の中では、微生物だけでなく沢山の生き物達が、春を目指して必至に生命の営みを続けているのです。
夜昼なく酒造りに追われる私達の冬ですが、水を張った冬の田圃を見るたびに、雪の下の生き物達に負けないよう頑張りたいと、思いを新たにします。
冬季潅水で溜池が空になると、底に溜まった泥をさらいます。
溜池の中では、鯉や鮒、泥鰌、川エビや、よしかわでは「ツブ」と呼ばれる大きなタニシ、淡水性のカラス貝、カエルなどたくさんの生き物が暮らしていますが、鮒は増えすぎると溜池の壁を突いて穴を開けてしまうので、水を抜いた後に、捕ってしまいます。鮒や鯉、タニシや川エビを、美味しい惣菜やお酒のつまみとして頂くのも、冬の楽しみです。
子供達は溜池の生き物に大喜び。大はしゃぎで鮒たちを捕まえています。 |
紅葉が映える、よしかわ大賀地区の棚田。冬先に水を張った田圃では、落ち葉や雑草などの腐敗が速く進み、それが翌年の稲のための肥料になります。
写真はよしかわ随一の篤農家Nさんの田圃です。
Nさんの家では、溜池から水を落として田圃に水を張ります。
田圃に吹き寄せられた落ち葉。
冬季潅水後、雪の下で微生物によって分解され、
やがて春には、稲を養う土に変身しています。
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